【技術資料】タイル工法に使用可能
研究開発用ユニバーサル基板
rev.B (2013/7/3)
●回路試作における従来工法とタイル工法
配線が大量で複雑なディジタル回路や、配線パターンで性能が左右される高周波回路のように試作段階から基板化する場合を除けば、
回路試作には一般的にユニバーサル基板が使用されます。
写真1は縦横それぞれ2.54mmピッチでスルーホールを配置した一般的なユニバーサル基板の一例で、通常はこの上に
写真2のように回路を組みます。(以下従来工法と呼びます)
【写真1】一般的なユニバーサル基板
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【写真2】従来工法による組み立て例
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従来工法とは別にタイル工法があります。
これは対象とする回路や部品を特化した写真3のような小形のユニバーサル基板(以下タイル基板と呼びます)の中から目的に合った基板を選択し、
タイルを貼るようにして基板ジョイントで連結して一枚の基板にし、その上に写真4のように回路を組み立てる方法です。
【写真3】研究開発用ユニバーサル基板
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【写真4】タイル工法よる組み立て例
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タイル工法では基板を積み重ねるスタック構造でなく一枚の平面基板として扱えるので、設計段階も含め部品間の配線が自由に行なえると共に、
回路の信号観測時のプロービングがし易いので検証を効率的に行なえます。
●研究開発用ユニバーサル基板とは
電子回路の試作では、趣味であれば人件費は無料なので時間が掛かっても、部品コストを抑える事が大事です。
一方、技術者にとっては部品コストより人件費の方が遙かに高価であり、作業時間を最少に抑える事が重要です。
多くの市販ユニバーサル基板は、回路とは無関係な基板屋さんが汎用的な蛇の目基板として設計しているのに対して、
「研究開発用ユニバーサル基板」は、実際に回路設計し試作を行なう研究開発者自身がユーザの立場で設計しており、
何れの製品も市販の一般的ユニバーサル基板には見当たらない機能性を有する事を大きな特徴としています。
これにより工数削減と品質確保が実現し、業務用としてのコスト/パフォーマンスが非常に優れ、プロユースと呼べるものになりました。
各「研究開発用ユニバーサル基板」は以下の特長を有し、タイル基板としても使用できるので回路試作に便利です。
@電源周りの配線が容易
電源用コネクタ、大形コンデンサ用パターンにより基板への電源供給部の組み立てが容易です。
また、多数のスルーホールを持つ電源バスにより各部品への電源配線や、各素子の電源端子直近でのパスコン取り付けも容易です。
「電源周りの配線が済めば回路組み立ては半分完了したも同然」と言われますが、その点で本特長は大きなメリットと言えます。
ADIP部品、SMD部品、大径リード部品の混在使用が容易
ピッチ変換基板を使わずにDIP部品とSMD部品を混在して使用できます。また、基板への追加工をほとんどせずに大形トランジスタ、ヒートシンク、大形ダイオード等、大口径のリードを有する部品が実装できます。
Bジャンパ線、または部品自体での配線が可能
予め用意されたパターンを上手に利用すると、リードベンダ等で線材をコの字状に曲げるだけのジャンパ線や受動部品を実装するだけで簡単に配線ができます。
これに伴い組み立て後の配線チェックも容易になります。
【写真5】タイル基板の垂直実装
C回路変更に伴う基板追加が容易
完成後でも必要なタイル基板を必要なだけ追加して回路変更できます。
直角型コネクタと垂直基板ガイドを用いて写真5のようにタイル基板をベース基板に垂直に実装して回路をコンパクトにする事もでき、その回路を他の試作回路に使い回す事もできます。
D部品変更が容易
新回路開発の為の試作機の検証では抵抗やコンデンサ等の定数変更の容易性も大事です。
一般的なユニバーサル基板では配線を部品のリードにからめて半田付けするので、定数変更の為の部品交換では一旦配線も外す必要が有り、大きな手間が掛かります。
研究開発用ユニバーサル基板では殆どの場合、部品のリードと配線はパターンで接続された個別のスルーホールに半田付けできるので、配線に影響を与えずに容易に部品交換ができます。
表面実装部品も同様です。
●トータル工数削減のメリット
以上のように、タイル工法によると設計・組み立て・検証のトータル工数を大幅に減らせます。
汎用ユニバーサル基板は開発費がほとんど掛からず販売数が多く製造ロットサイズを大きくできるので安価ですが、研究開発用ユニバーサル基板は開発費(開発工数)
が大きく、多品種少量生産の為比較的高価との印象があるかもしれません。
しかし、先述したように研究開発業務として回路試作を行なう場合は、コスト的には部品価格は無視可能レベルで、工数を減らす事が最重要です。
例えば時間単価4,000円の技術者が200円の汎用ユニバーサル基板を使用して製作に5時間掛かれば20,200円ですが、
2,000円の研究開発用ユニバーサル基板を使用して2時間で製作できれば10,000円で組み立てコストは半分以下になります。
あるいは2,000円の研究開発用ユニバーサル基板で試作時間を30分短縮できれば元が取れますが、実際には数時間レベルの時間短縮になるので、
そのメリットは極めて大きいとも言えます。
また、試作検証期間の短縮はコストを下げるメリットだけでなく、先願主義の下で一日を争う特許出願に関わるような回路開発を行なう場合には、
金額に換算できない重要なアドバンテージになります。
弊社では今後も研究開発用ユニバーサル基板の品揃えを増やして行く予定です。
研究開発に携わる多くの技術者の皆様にご利用頂き、新たな成果を生み出すツールになれたら有り難いです。
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